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ソーラーだらけ、地元に波紋
五島列島の北端にある宇久島(長崎県佐世保市)。周囲37キロ・メートル、人口約1800人の小さな島が、国内最大のメガソーラー(大規模太陽光発電所)計画で揺れている。
完成すれば、150万枚もの太陽光パネルが設置され、変電所や鉄塔、電柱といった関連施設を含め、島の面積の4分の1を占めることになる。出力は原子力発電所1基分に匹敵する計48万キロ・ワット。九州本土と64キロ・メートルの海底ケーブルで結ぶ計画だ。
土地の借り上げ契約は完了し、工事関係者の宿舎や資材置き場の設置が進む。だが、地元や漁協が反対し、工事が完了する見通しは立たない。
「なぜやる方向で決まっているんだ」。事業を主導する九州電力グループの九電工などによる地元説明会では一部住民が反発。島南部に住む木寺進さん(76)は「まるで植民地だ。太陽光パネルだらけの島になる」と憤る。
一方で、事業に期待する住民もいる。島の人口は過去20年で半減した。耕作放棄地が広がり、メガソーラーに雇用創出の期待がかかる。工事による特需に加え、維持管理などで50~100人の雇用が見込まれるという。「何もしなければ、島は廃虚だらけになる」。島で生まれ育った大田洋子さん(69)はメガソーラー計画に島の未来を託す。
計画が公表されたのは2014年。再生可能エネルギーの普及に向け、政府が12年に導入した「固定価格買い取り制度(FIT)」は当時、1キロ・ワット時あたり40円という破格の買い取り価格で、「太陽光バブル」を招いた。
この価格での買い取りの期限は40年9月。発電開始が1年遅れるごとに約200億円を失う計算だ。九電工の幹部は「事業の中断は地元に影響が大きい。FITなら採算は確保できる」と話す。
高値の買い取り目当て、不自然な工事
「環境保全の観点から著しく合理性を欠く」――。宮城県でメガソーラーの建設を計画する菅生太陽光発電合同会社(東京)に対し、環境省は8月、異例の厳しい大臣意見を出した。
太陽光による電気の買い取り価格が高かった14年に認定された仙台市の計画地には、太陽光パネルを1枚だけ置く。残りの8万3000枚は、後から追加した11キロ離れた隣町に設置し、仙台と送電線でつなぐ。隣町で発電した電気も仙台と一体とみなされ、高値での買い取りが期待される。環境省はこの不自然な送電線を問題視した。
利益を追求する資本主義は地球温暖化をもたらし、脱炭素が叫ばれた。再生エネの高い買い取り価格も脱炭素を推進するためだ。ところがその再生エネもまた、資本主義の歯車の中で人や自然に歪みを及ぼしている。社会とのバランスを考慮した資本主義が今こそ求められる。
プラ再利用 1割未満
産業革命以来の資本主義は世界経済を発展させた反面、地球温暖化という深刻な副作用を生んだ。脱炭素への具体策として、太陽光発電など再生可能エネルギーの普及とともに、焼却処分で大量の温室効果ガスが生じるプラスチックごみの削減が注目される。