半年後に始まる「インボイス制度」。企業や個人事業主が納める消費税のルールが大きく変わります。国が納税額などをしっかり把握するというのが目的なのですが、この制度で負担が増えるとの懸念の声が出ています。

都内に住む小泉さん一家。夫婦でフリーランスのライターとして働きながら、保育園に通う子どもを育てています。

フリーランス 小泉なつみさん
「すごい不安定なんですよ、収入が。波のある仕事なので」

そんな中、取引先の出版社から「なるべくインボイスに登録してほしい」との通知が来ました。

今年10月から導入される「インボイス制度」。これまで小泉さんのような売り上げ1000万円以下の小規模事業者は消費税を免除されていましたが、インボイスに登録すれば消費税を納めなければなりません。


フリーランス 小泉なつみさん
「(夫婦)2人で消費税の負担が(経過措置が終わると)年間50~60万円くらい増えるので、ちょっとこれは生活が厳しいなというレベルですね」

50万円は重い負担。しかし、登録しなければ、別の不安が出てきます。

企業などは消費税を納税する際、売上で得た消費税から仕入れで支払った分を除き、国に納めています。インボイス制度が始まるとこうした控除を受けるためには、取引先の事業者がインボイスに登録している必要があります。登録していない事業者に払った消費税は控除ができなくなるのです。その分の消費税は企業側の負担に。結果、取引先の選別が進む可能性が指摘されているのです。

フリーランス 小泉なつみさん
「取引から排除(仕事がもらえなくなる)という懸念が一番あります」

こちらの青果店は鮮度にこだわり、群馬県の農家から直接野菜を仕入れています。しかし、こうした取引先に「インボイスへの対応を求めるのは難しい」と話します。

草木堂野菜店 甲田崇恭 社長
「基本的にはうちに来る請求書は、全て手書きでアナログな作業で」

実際に仕入れ先を回ってみると…。

取引先の農家
「正直、はじめインボイスってなんだろうな?って思って」
「負担が増えるだけの話ですよね、事務にしろ、納税の手続きにしろ」

戸惑いの声ばかりが聞こえてきます。

今回、社長は取引先に対し、当面、インボイス登録を求めない決断をしました。新たに負担となる消費税は、経過措置が終わると、年間およそ200万円にもなる計算です。

草木堂野菜店 甲田崇恭 社長
「これまでの付き合いがありますから。もう廃業を考えないといけないようなレベルの負担になると思います」

事業者を悩ませるインボイス制度。政府は、制度開始から6年間は免税事業者等からの仕入れ税額を一定割合で控除可能とし、小規模事業者についても、3年間、消費税納税額を売上税額の2割とするなどの経過措置を取る予定です。