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建モノがたり

麻布十番のレストラン(東京都港区)

都会の隠れ里 「明快」と一線

施工は「ビーンズ」、内装は「大成ロテック」が担った。「関係者全員によるチームワークの結晶です」と青木さん
施工は「ビーンズ」、内装は「大成ロテック」が担った。「関係者全員によるチームワークの結晶です」と青木さん
施工は「ビーンズ」、内装は「大成ロテック」が担った。「関係者全員によるチームワークの結晶です」と青木さん 2階の内部(テナント入居前)。窓から向かいの擁壁やお墓が見える=山岸剛氏撮影

飲食店などが立ち並ぶ東京・麻布十番。坂道の途中に現れる不思議な形のコンクリートの塊は、何に使われているの?

 坂の多い麻布十番。表通りから小道へ入ると、うっそうと茂る木々と擁壁に囲まれて雰囲気が一変する。角地に立つ「麻布十番のレストラン」を手がけたAAOAAの青木弘司さん(45)は、起伏の多い周辺の環境から「ストーンヘンジみたいな、岩が積み重なった建築」をイメージした。

 「不気味さに関心がある」と青木さん。だれが見ても正しいもの、明快なものしか許されなくなる風潮は窮屈ではないか。簡単に理解や説明ができないものがあっていいのではないか。

 全体や部分の形をひとことでは表現しにくい建物はこんな意識から生まれた。といって感性のままに線を引いたわけではなく、無数のルールの積み重ねの結果だという。「ひとつの正解があるのではなく、多様な解釈を促したいという思いがありました」

 規格外の形状のコンクリート打設にはつねに緊張感が伴った。型枠造りは腕のいい職人に助けられたが、コンクリートの流し込みがうまくいくかは自然条件や偶然にも左右される。「型枠を解体して成功していたときは、感動しました」

 出っ張った柱の中がトイレになっていたり、機能面では説明できない柱やはりの凹凸があったりと、内部もクセがある。テナントが入れ替わり内装を更新する際の効率性を考えればセオリーを外れている。事務所のパートナーの岡澤創太さん(38)は「テナントさんもこの建築に向き合わざるをえない。そうやって考えることで唯一無二のここだけで成立する店ができるはず」と話す。

 暗闇坂、大黒坂、一本松坂……。周囲の坂には由来への好奇心をかき立てる名がついている。青木さんの願いは「土地の物語に新たに参加する存在になってくれたら」。

(片山知愛、写真も)

 DATA

  設計:AAOAA、齋藤由和(アデザイン)
  階数:地上3階、地下1階
  用途:飲食店
  完成:2022年

 《最寄り駅》 麻布十番


建モノがたり

 2階には麻布十番はなぶさ(お問い合わせは03・5443・9230)が入る。カリッとジューシーな地焼きの愛知県・一色産ウナギと秘伝のタレが自慢で、中でもひつまぶしがおすすめ。ランチ((前)11時半~(後)3時)は贅沢ランチコース(5800円)、ディナー((後)5時半~10時)ははなぶさコース(9900円)が人気。

(2022年6月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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