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コロナ3年 正常化への道<5>
新型コロナウイルスの遺伝情報を解析する東京都健康安全研究センター(新宿区)。都内の保健所などから毎週寄せられる数百人分の感染者の検体分析で、新しい変異株をいち早く把握し、流行の動向を探る。
この3年間、アルファ株、デルタ株、現在主流のオミクロン株など、次々と現れる変異株に監視の目を光らせてきた。オミクロン株から派生し、米国で急増する「XBB・1・5」も今月、確認された。「職員の使命感は強いが、終わりが見えず、疲労も蓄積している」。現場を指揮する貞升健志・微生物部長はこう話す。
2021年末以降、世界中に広がったオミクロン株は、変異の過程で高い感染力を獲得した。わずかに変異した新系統が徐々に拡大、昨夏の第7波をもたらした「BA・5」に加え、「BQ・1」「XBB」など複数の系統が併存しながら感染が続いている。
ウイルスは、増殖時に遺伝子の一部で「コピーミス」が起きて変異する。国内外で感染が高止まりすれば、これまでとは異なる性質を持つウイルスが発生しやすい。河岡義裕・東京大医科学研究所特任教授(ウイルス学)は「今後の予測は難しいが、世界のどこかで新しい変異株が出てきてもおかしくない」と話す。
未知の変異に対応するワクチンの開発は現在も進む。米ファイザーや米モデルナなどが実用化した「メッセンジャーRNA(mRNA)」ワクチンは、ウイルスの遺伝情報がわかれば、成分を入れ替えるだけで比較的簡単に変異株にも対応できる。ただ、実用化に半年程度かかるため、モデルナは、これをさらに短縮する技術の確立を急ぐ。
出遅れた日本も昨年3月、ワクチン開発の司令塔「先進的研究開発戦略センター(
新型コロナでは、震源地となった中国が感染状況の情報公開に依然として消極的だ。今後、各国がより迅速に情報共有する体制が重要で、変異株の特徴や症例を集めるデータベースの高度化なども課題となる。
世界的に感染が収まらず、新型コロナへの対応は長期化の様相を見せる。山本太郎・長崎大教授(感染症学)は「ワクチンや治療薬を活用しながらウイルスと緩やかに共存していくことになるだろう」と指摘する。
世界保健機関(WHO)は27日、3年前に出した緊急事態宣言の終了に必要な条件について協議を始める。新型コロナと共存しながら「出口」を模索する動きが、世界で本格化する。
(おわり。この連載は後藤香代、鈴木希、伊藤崇、冨山優介、佐野寛貴、村上和史が担当しました)