コロナワクチンで21年の死者1万8000人減 西浦氏ら試算
京都大学の西浦博教授や茅野大志特定助教と国立感染症研究所の研究チームは、国内における新型コロナウイルスワクチンの接種によって、2021年3~11月に約56万人の感染と約1万8000人の死亡を減らす予防効果があったとの分析をまとめた。高齢者を中心に効果は大きく、ワクチン接種がなかった場合と比べて死亡を7割近く減らすことができたと推定した。
英医学誌ランセットの姉妹誌に論文を発表した。21年3~11月はワクチン接種が進む中、主にアルファ型による第4波とデルタ型による第5波の感染拡大があった時期で、オミクロン型の流行前だ。感染や死亡を防ぐワクチンの有効性と年代別・男女別の接種率、感染者や死者の報告数などのデータをもとに、国内の感染や死亡をどれだけ防げたのかを計算した。
分析の結果、期間全体で感染を予防できたのは男性約27万人、女性約29万人、死亡を予防できたのは男性約1万1000人、女性約7700人と推定した。予防効果は65歳以上の高齢者で特に大きく、65歳以上の男性約9500人、女性約7300人の死亡を防ぐことができたとしている。
ワクチン接種がなかった場合を単純に仮定すると、全体で約172万人の感染者と約2万8000人の死者が発生し、ワクチンによって感染は33%、死亡は67%減ったと推定した。論文では「コロナワクチンによる免疫は、感染者と死者を減らし、医療システムの負担を軽減する最も安全で効果的な手段である」と指摘している。
今回の分析では緊急事態宣言などの公衆衛生対策の影響を直接には考慮していない。宣言などの強い対策がなければ流行の規模はさらに大きくなり、ワクチンによって予防される感染や死亡も多くなっていた可能性がある。
ワクチン接種には直接的な効果と間接的な効果がある。直接的な効果は未接種と比べて接種者の感染や死亡のリスクが下がることだが、人口のワクチン接種率が高くなると感染の連鎖が起こりにくくなり、未接種者のリスクも下がる。今回の試算は直接的な効果までだが、間接的な効果も含めれば、ワクチンによって感染者や死者が減った効果はさらに大きいと考えられる。
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