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車の運転 やめ時と説得法…「危険察知」衰えの自覚促す

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ところざわ自動車学校では、教官と高齢ドライバー、その家族が交差点の様子を観察し、危険察知ができているか確認する取り組みをしている(埼玉県所沢市で)

 高齢者の運転による悲惨な交通事故が相次ぐなか、運転に不安を感じる高齢者も多いだろう。運転のやめ時を見極めるポイントを知っておきたい。やめる決断には、家族のサポートも大切だ。

 宮崎市で10月28日、73歳の運転する車が歩道を暴走して通行人を次々とはね、2人が死亡する事故が起きた。警察庁によると、昨年の交通事故のうち70歳以上による事故は、10年前の1・2倍の6万3266件だった。

 高齢者の運転に詳しい自由学園最高学部非常勤講師の溝端光雄さんは、「運転能力の衰えは他人の命も脅かす」と注意を促す。個人差は大きいものの高齢になると、〈1〉認知機能が衰える〈2〉視野が狭くなったり首が回りにくくなったりして、周囲の安全確認が難しくなる〈3〉筋力が衰えてブレーキの踏み込みが甘くなり、停止距離が長くなる――といった傾向がみられるという。

 認知症の場合はより深刻だ。警察庁によると、昨年の75歳以上の運転者による死亡事故471件のうち、認知機能の衰えが疑われる人の事故は4割に上った。

 立正大学教授の所正文さんによると、認知症の人の運転にはいくつかの特徴がある。「走り出してから、自分がどこへ行くつもりか忘れてしまう」「事故を起こしたことを忘れてしまう」「高速道路のサービスエリアで入り口と出口を間違い、逆走することがある」などだ。所さんは、「こういう経験があったり、軽度でも認知症と診断されたりしたら運転をやめることを考えてほしい」と話す。

 道路交通法では、医師に認知症と診断されたら免許は取り消しか停止になる。75歳以上が免許更新時に受ける認知機能検査で「認知症の恐れ」と判定され、信号無視などの交通違反が過去1年か検査後にあった場合に、医師の診断が義務づけられる。ただ、検査で「認知症の恐れ」と判定されても、過去1年に違反を起こしていなければ、医師の診断なしで免許を更新できる。

 高齢者の中には「自分は大丈夫」と過信して、家族の助言を受け入れない場合もある。

 「高齢の親の運転をやめさせたい」と相談を受けることがある「ところざわ自動車学校」(埼玉県)の副管理者・速水篤さんは、「一方的にやめるよう促すのではなく、客観的に危険察知の能力が落ちていることを自覚してもらうようにしましょう」と話す。

 例えば、信号のない交差点近くに家族で10分ほど立ち、車が一時停止をしたか、停止位置に問題はなかったか、歩行者が安全に横断歩道を渡れるよう自転車は配慮していたか――といった安全に関わる事象を各自が観察し、結果を照らし合わせる。「高齢者が若い人と比べて『自分はこんなに危険に気付いていない』とわかれば、納得しやすくなります」と速水さんは言う。

 運転をやめると不便も生じる。所さんは「運転をやめたあとの暮らし方について、本人や家族が早くから考えておく必要があります」と話す。

高齢者が運転をやめることを考える手がかり

 

 <高齢者自身によるチェック

 ・10メートル歩くのに20秒以上かかる

 ・「93―5」「88―5」「83―5」と、5を5回引く引き算を全問正解できない

 ・運転しているうちに、行き先を忘れてしまうことがある

 ・覚えがないのに信号無視や一時不停止で検挙された

 <家族によるチェック

 ・新しく車体にできた傷について質問したら、「覚えがない」と答えた

 ・助手席で安全確認の様子を観察したら、蛇行運転や信号の見落としがあった

 (溝端さん、速水さんの話を基に作成)

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