水不足が課題の高松市で稲作に貢献
ELTRESで実現する稲作×IoT

ELTRESでは、センサーを用いた農作業の効率化・省人化を目指しています。
今回は秋田県での事例に続き、ELTRESを活用した稲作事例として香川県高松市の佐藤様、高松市役所ご担当者様にお話を伺いました。

【画像1】取材にご協力いただいた皆様・前段左から2人目が佐藤様

地域課題としての「水不足」

高松における稲作での課題

農業に使える水量が少ないこと、それに伴い田んぼへの入水に時間がかかること、場合によっては入水の時間帯に制限があること、麦の収穫と稲作の準備をスピーディーに行わなくてはいけないこと、などが課題として挙げられます。

香川県は、ため池が多い県である一方、水が非常に少ないです。

農業用水は1974年に行政が主体となり完成した、高知県の早明浦ダムを水源とする大規模な水路(香川用水)
とため池から取水しているのが現状ですが、 今年は取水制限がかけられた時期の影響もあり、日中に関しては非常に水が少ない状態が続いておりました。

従って、水が少ないことを理由に、大きな田んぼというのはありません。

小さい田んぼを区分けして、なるべく効率的に水を張り巡らせられるように工夫をしていますが、利用できる水量がそもそも少ないため、1枚の田んぼに水を入れるのに非常に時間がかかります。

また、前述の取水制限の時間帯による影響で日中の入水が難しかったため、深夜から朝方にかけて入水を行った時期もありました。

加えて、高松では田んぼで麦も作っており、5月下旬に収穫を行うわけですが、短時間ですぐに次の稲作に向けて効率的に準備を始めなくてはいけません。

「入水作業を効率化したい」
ELTRES冠水センサーとの出会い

上記の課題をなぜELTRESの冠水センサーで解決しようと考えたのか?

田んぼへの入水をどうにか効率化できないものかと思案していた際に、ELTRESに出会いました。

私ひとりで6ヘクタール、80枚もの田んぼを見て回らなくてはいけないのですが、 入水に時間がかかるため、1枚の田んぼに張り付いて水が溜まるのを最後まで確認するというのはとても非効率です。

ELTRESを導入したことで、一つの田んぼへ入水を行っている間に次の田んぼに行き、そちらの入水を行っている最中に前の田んぼの入水が完了すれば、センサーからアプリに通知してくれるのでそのタイミングで確認しに行く、という効率的な田んぼへの水入れが実現できるようになりました。

深夜に入水を行う際は、寝ている最中に水が溜まったことを通知してくれればそのタイミングで起きて確認しに行く、ということもできますし、とにかく時間の無駄が無くなったと感じています。

冠水センサーを使った実証実験で分かったこと

田んぼに入水をするときは、水路を伝って水を入れるわけですが、当然水路にしっかりと水が来ていないと田んぼまで水を運ぶことはできません。

従って、水路にELTRESを設置できるようにしてもらい、どの程度の水量があるのかわかるようになったら更に便利だな、と感じました。

またセンサー自体にそれなりの高さもありますし、私のように80枚もの田んぼを受け持っていると、稲作の準備にかけられる25日の間で設置するのはなかなか労力がかかります。

このあたりが何かしらの形で改善されると更にありがたいなと思いました。

これらは実証実験を行ってみないと分からなかったことです。

【画像2】冠水センサー設置の様子

ELTRES冠水センサーの効果

実証実験の結果・結局課題は解決できたのか?

田んぼへのELTRES設置は、入水の効率化が叶ったため、非常に成果を出すことができたと感じています。

加えて、害虫(ジャンボタニシ)駆除のための詳細な水質管理なども行えると更に理想的かな、と感じました。

【画像3】水位監視中
【画像4】手前が佐藤様の田んぼ・奥の田んぼと比較すると雑草がほとんどない

農業×IoTの今後の展望

直近で実現したいことは?

現在、入水が完了したかどうかの通知に関しては、メールで届くようなシステムですが、これが80枚もの田んぼを担当していると次から次へとメールが来てしまい、パニックになります。

どうしても見落としたり、確認しそびれたりという問題が起こってしまいますので、できれば、画像で入水の確認をできるようなアプリを開発してくれたら、非常に有り難く思いますのでぜひ、実現していただきたいです。

また、稲作に従事する方は高齢者が多いですので、スマホの操作が苦手な方でも簡単に扱えるものだと尚の事ベストです。

加えて、これはELTRESに限った話ではないですが、今後高松では、溜池から田んぼに対してパイプラインをひいて、自動で入水するような形が増えていくと思いますので、それに従って、入水そのものに関してもスマホの操作で遠隔でできるようになったら、すごく便利だな、とイメージしています。

周囲の反応

田んぼを見て歩いている高齢者が、ELTRESの冠水センサー見て、「これ何や?」と興味を持って聞いてきてくれます。

反応を見ていると自分の田んぼでも取り入れてみたいと思うようです。

特に60歳以上の方は、今とは比較にならない水不足を経験していますし、その思いは尚更強いのかもしれません。

しかし、先にも申しました通り、スマホの操作が苦手な方も多いので、二の足を踏んでいるような現状です。

「直近で実現したいことは?」の項目でお答えしたことと重複しますが、こういった事情で新しい技術をなかなか取り入れられない層が、いかにして簡単に使いこなせるようにできるか、この辺りが解消されれば、サービスがより広がるのではないか、と感じました。

農業×IoTで今後求めること

やはり費用対効果の向上と労力の削減が鍵を握っていると思います。

今回のELTRESで言えば、性能が良い以上安価に出来るものではないので、80枚全ての田んぼに設置するとなるとなかなかの投資です。

高松で作っている米の売値、というのはどうしても東北などに比べると下がってしまいます。

ざっくりですが高松の米価の約1.5倍が東北の米価となります。

田んぼの総数も決して多くはないため、ある程度予算を絞りながら稲作を行わざるを得ません。

ELTRESを一回限りではなく翌年の稲作にも使用できれば、当然費用対効果も倍になりますので、そういった点をぜひ農家の声として、今後の開発の際に役立てていただきたいなと思います。

行政とも連携をとって補助金の対象などにもなれば、IoTの意義が更に広がりそうですね。

【高松市】
高松市では、若年農業者にも魅力のある創造性豊かで持続可能な農業を実現するため、ロボット、AI及びIoTなど先端技術を活用する農業に取り組むための支援として、「スマート農業推進事業」を実施しています。当事業は、スマート農業の導入により、農作業の省力化や農作物の高品質化等を図る農業者に対し、機械やシステムの導入経費を補助しています。
今般のような現地における実証を通じ、今後はスマート農業技術がより一層向上・普及し、コスト面も導入に対するハードルが下がることで農業者にとって、「価値あるもの」から「当たり前のもの」になるよう本市としても多面的に支援したいと考えています。

労力の面に関してはやはり、80枚ある田んぼ全てに鉄パイプをつけて取り付けていくというのはなかなか大変でした。

田んぼでロータリーを動かす際には、その都度抜いたり、移動させたりする必要もあります。

センサーの取り付け方法や大きさなどで解消される部分かと思いますので、労力の削減という意味でも期待したいなと思っています。

【画像5】冠水センサーと田んぼ
【画像6】自慢のお米

※今回使用した冠水センサーの詳細は下記URLよりご確認ください。
https://eltres-iot.jp/work/solutionset-026/

最後に

ELTRESは安定通信・長距離伝送・低消費電力・高速移動体対応・GNSS標準搭載の特長を生かして様々な業界でご活用いただいております。

【活用例】
・物流:移動車輛の監視
・環境モニタリング:溜池の水位監視
・インフラ監視:街路灯の電力監視と設置位置管理
・農業・畜産:放牧牛のトラッキング
・人の安全みまもり:CO2センサで「3密」を検知
・スポーツトラッキング:アドベンチャーレースでのトラッキング
・IoTプラットフォーム:温湿度、不快指数、安全管理、物流管理、獣害被害対策、見守り等

「興味がある」から「実際に活用方法を検討している」までどの段階でも構いません、お客様のご希望に合わせてお話しさせていただきます。
まずはお問い合わせください。

お問い合わせ

お問い合わせ内容によっては、ご回答までにお時間をいただくことがございます。
何とぞご了承ください。